くろりだいあり〜

中央省庁の中の人による雑記ブログです。

水素水とはなんだったのか

先日、近所にある飲食店で昼食をテイクアウトしたとき、サービスで水素水がついてきた。

おいおい・・・水素水って数年前に話題になって偽科学だと叩かれまくってたじゃないか、と呆れた気持ちで渋々受け取り、昼食と共に飲んでみた。

まぁ、普通の水と大差ない味だ。

そもそも天下の伊藤園がこんなアコギな商売をするのかと疑問に思い、後日そのHPを検索してみた。

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https://www.itoen.jp/suisosui/

 

なるほど、見てみると水素水の効能については一切書かれていない。

通常の水と比較したメリットについては記載がなく、それらしい記載といえば『美や健康が気になる方に輝きめざして水素水プラス!』という記載だけだ。

ちなみにこの記述には何の問題もない。

何故ならば「水」を飲むことの健康効果は厚労省が認めているからだ。

「健康のため水を飲もう」推進運動-厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

 

であるならば伊藤園が「水素水は、水と同じように飲用していただけます。」と明言しているように当然、水を飲むことによる健康効果は期待できるだろう。水に水素を封入すること自体に悪影響は認められないし、水素特有の効果を喧伝しない限り、炭酸水を販売することと違いはないのだ。

 

このように、水素水に突出した健康効果が今現在認めらていないことは事実である。

にもかかわらず、水素水で検索すると胡散臭い通販サイトが山ほどヒットし、「疲労回復効果、老化防止効果等」を謳い続けている。

そんな中、2021年の3月30日、消費者庁が面白い報告をしている。

 

水素水生成器の販売・レンタルサービスの提供事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について

https://www.caa.go.jp/notice/entry/023608/

消費者庁は、令和3年3月29日及び同月30日、水素水生成器の販売・レンタルサービスの提供事業者4社に対し、4社が供給する水素水生成器に係る表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。』

 

水素水が爆誕してから4年、いよいよ消費者庁が措置命令を出したのである。

いずれの水素水サーバーレンタル業者も優良誤認にあたる表示を行ったとされており、消費者庁から

・再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。

・今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示を行わないこと。

を命じられている。

この4社はどのような掲示を行ったのだろうか。

 

例えばD社は以下のような掲示を行っていた。f:id:gen961:20210511191916p:plain

水素水とは水素分子が水溶け込んでいる水のことを言います。この水素の大きな効果として活性酸素を取り除くということが挙げられます。 活性酸素とは細胞が酸素を消費する際に作られるもので、殺菌効果などがある善玉と、酸化力が強い悪玉に分けられます。悪玉活性酸素は酸化力が非常に強力で、細胞を無差別に攻撃してしまうため老化や癌などの様々な病気の原因になると言われてます。さらに活性酸素はビタミンCも破壊してしまうため、しみやくすみの原因になることでも知られています。水素の分子はとても小さいため脳や卵子といった身体のすみずみまで入ってこの悪玉活性酸素と戦ってくれます。ですから普段の生活にかかせない水を水素水に変えることで、日々の暮らしの様々な場面で良い効果が期待できます。

 

これに対し、消費者庁は以下の指摘(抜粋)を行っている。

 

『あたかも、本件商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の悪玉活性酸素が排除され、老化防止効果、がんなどの様々な疾病の予防効果、シミやくすみを改善する美肌効果及び筋肉疲労軽減効果が得られるかのように示す表示をしていた。』

『前記の表示は、それぞれ、本件商品及び本件役務の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものであること。』

 

つまり、消費者庁は公式の見解として、水素水には「老化防止効果、がんなどの様々な疾病の予防効果、シミやくすみを改善する美肌効果及び筋肉疲労軽減効果」は認められていないとしているということだ。

2016年当時は消費者庁が効果がないことを断定するような声明を出していた記録がなく、断定しづらいものなのかなと勝手に思っていたが、いよいよ公式にこのような記載がされたことに感慨深いものを感じる。

 

これを受けて、D社のHPは以下のように修正された。

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http://suiso-waterserver.com/html/page1.html

 

実際リンクから見てもらえば早いが、「水素水」を飲むことによる具体的効能については一切記載がなく、淡々と高濃度の水素が封入されていることのみが宣伝されている。それは事実なのだろう。

消費者庁のページからぜひほかの勧告例も確認していただきたい。実に愉快興味深い広告が確認できる。

 

「健康効果はない」と断言されているにも関わらず、消える気配を見せない水素水業界、一体どのような層によって支えられているのだろうか…