くろりだいあり〜

中央省庁の中の人による雑記ブログです。

出世と官僚

先日、本ブログにて以下のコメントをいただいた。(コメントありがとうございます!)

・役人の昇格制度ってどんな感じですか? 同族企業に似たようなものというイメージがあるので、現実と建前どっちも知りたいです。

そもそも僕が同族企業というのものを知らなかったので早速ググってみたところ、Wikipediaさんによると

同族経営(どうぞくけいえい)とは、特定の親族などが支配・経営する組織のことを指す。
家族経営およびファミリー企業とも称す。
(引用元:同族経営 - Wikipedia

とのことだった。すなわちコネ入社が異様に多い企業を意味しているようだ。たまに耳にすることがあるし、色々調べてみるとウォルマートフォルクスワーゲン同族経営にあたるらしい。勉強になる。

ただ、中央省庁の人事が同族企業形式であるかと言われると、全くそんなことは無いので今回は「役人の人事制度」をテーマにしようと思う。
※専門職や研究職としての採用区分も存在するのだが、今回は霞ヶ関で働く事務屋に絞って解説する。

まず、そもそも論として中央省庁で働こうと思えば、国家公務員として入ることになるのだが、その採用は大きく3種類ある。

・国家公務員総合職
・国家公務員一般職
・国家公務員専門職

このうち、国家公務員専門職は国税専門官や労働基準監督官などの、ある特定の分野のスペシャリストであり、今回説明する中央省庁の人事とは別の軸で動いているので説明は省略する。

まず、国家公務員総合職は人事院のHPにおいて「政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する
事務をその職務とする」とされており、平たくいえば政策というコンテンツの企画・設計をする職種である。一般的に「官僚」というと、この総合職を指して使う言葉であり、幹部候補として採用される。

次に国家公務員一般職は人事院HPで「定型的な事務をその職務とする」とされ、こちらも平たくいうなれば政策というコンテンツを実際に動かす職種だ。すなわち、総合職が政策を作り、一般職が実働部隊としてそれに係る事務をこなす。

基本的な職種を説明したところでここから人事の話に入っていくのだが、総合職と一般職の人事には決定的な違いがある。

それは一般職は特定の部署での異動に固定されるのに対し、総合職はかなりバラついた部署に異動するという点だ。

総合職、一般職共に1~2年というハイペースでの人事異動が行われるのは共通しているのだが、総合職は政策の企画がメイン業務であるため色々な部署に放り込まれ様々な分野を勉強させられる。対して一般職は特定の部署・分野内での異動を繰り返し、その分野の生き字引となることが多い。

また、これは個人的に良くない事と思っているのだが、総合職と一般職で出世スピードに信じられない差が存在する。

一般職が通常係長に昇格するには8~10年かかるのに対して、総合職は入省してから最短わずか1年、遅くとも4年以内には係長となる。
その後も総合職は40~50代でほぼ全員課長クラスまで昇進するが、一般職は定年退職するまで課長補佐クラス、下手すると係長のままということもある。

ここまで露骨な昇進の差があるのはいかがなものか…という気持ちは否めない。僕自身総合職として入省させていただいているが、一般職にも僕より優秀な人はいくらでもいる。この差は是正されて欲しい。

ここで、1番最初の問に戻り同族企業のような幹部親族の幹部待遇があるかという話をするが、これは絶対にありえない。

中央省庁において幹部クラスになるためには総合職として入省する必要があり、また、総合職採用をされるためには人事院と各省庁のダブルチェックがある。両方に絶大な影響力を持つ激ヤバ幹部がいるならまだしもそんな人はまず存在し得ないので、コネ入省させることなどまず不可能だろう。

ちなみにテレビで時々話題になる内閣人事局は課長以上の幹部クラスの人事を司っており、僕のような若手ではどのようにコントロールされているのは正直よく分からない。

そのクラスまで行くとまた違う人事の世界があるのだろうが…。

と、今回は中央省庁の人事についてザッと解説した。かなりマニアックな話になった気がする。

コメントで取り扱って欲しいテーマがあれば記事を書かせていただくのでお気軽にどうぞ。

ではまた。